「辛いからこそ幸福」という考え方

精神医学

外科医時代、とても尊敬していた先生に言われたことの一つに、

「忙しく、辛いからこそ、数少ない休日に感謝することができて、幸せになれる」

とうものがありました。

その先生自身も、仕事は忙しいし、理不尽だし、寝不足だし、何度も辞めようと思ったけれど、よくよく考えるとこのくらい毎日が厳しいほうが結局Happyなのではないだろうかという結論に対し、仕事を辞めずにここまできたと仰っていました。

全てが思い通りにいけば必ず幸せかというと、そんなことは決してないと思います。

これまでの経験からも忙しさの中に充実感を見出したことは何度もありましたし、全てを手に入れたかのように見える著名人の自殺のニュースを聞いても同様のことを思います。

ただ、幸福を感じるために必要な自由と制限の割合は個々人の差が大きいとも思います。

連日病院に泊まり込み、週に1回家に帰れるくらいが幸せな人もいれば、仕事は9-17時の定時出勤がベストという人もいます。

楽な方が幸せと決めつけるのは間違っていますが、辛ければ辛いほど幸せというのも間違いです。

やはり、忙しい経験と楽な経験、どちらも必要でしょう。

一方で、外科医時代不思議に思っていたことがあります。

夜間の緊急呼び出しや、急な新患のたびに本当に嫌そうな顔をするくせに、ずっとその仕事を変えずにいる人達が存在します。

長年その仕事を変えずにいるということは、ある程度その仕事を気に入っているのだと思います。

嫌なら辞めればいいのに、と思っていましたが、緊急呼び出しのような「辛いこと」こそがその人を長期的に幸せにしている可能性に関して、無自覚のまま、無意識下でその仕事を気に入っている、ということなのでしょうか。

人間よくできているなと思います。

自分は、精神科では、新患の対応で外来に呼ばれた時は、むしろワクワクします。呼ばれるたびに苦痛を感じる科にはいられないなと思ってしまいました。

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