逃げるように転科するのか、追いかけるように転科するのか。
今の科が嫌になってしまったから転科を思いついたのか、どうしても別にやりたいことができたから転科するのか。
一つ重要なことは、今の科に満足していたら転科など思いつかないということだ。
おそらく殆どのケースで、転科はまず逃げの気持ちから始まったと思う。
正直に述べると、私も最初は逃げの気持ちだった。
外科は体力的にしんどいし、休みがないし、罵声を浴びせられるし、失敗が怖いし、教科書の勉強・ビデオの勉強・手技の練習、と突き詰めるといくら時間があっても足りない。しかも若手が経験を増やそうと思えば、緊急症例に頼らざるを得ず、「働き方改革」に自ら逆行する必要がある。
実際、外科の同期たちにとって緊急手術はご褒美で、たとえ深夜であってもそれは変わらなかった。
一方私は、専門研修が始まってすぐ、できることなら手術をしたくないなと思ってしまった。どうしてそんなことに初期研修で気づくことができなかったのかは今では不思議だが、とにかくそう思ってしまったのである。初期研修中に、きちんと想像力を働かせて専門研修が始まったあとのことをイメージできる人は良いだろうが、未来への想像力が乏しい私には難しいことだった。「手術かっこいい」で選んでしまった。愚かすぎて目も当てられない、、、
「外科無理!!」となってからは早かった。医学生のときは精神科志望だったから、迷うことなく転科するなら精神科に行こうと思った。少なくとも今よりは体力的にも楽だろうという打算もあった。
振り返ると転科は正解だった。逃げの要素は間違いなくあったが、純粋に今は仕事や勉強が楽しい。
医者になる人は真面目で正義感が強い人が多いから、自分が逃げることを許せない人が多いと思う。
でも人には向き不向きがあるし、その道で成功する人は、他人から見たら辛い努力を辛いと思わずにやってのける人であるから、辛いことを続けても実りは少ないのではないかと個人的には思っている。
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