精神分析③

精神医学

精神分析的精神療法を受け始めた当初、毎回のセッションにおいて話すことや相談内容を予め準備するべきか質問したところ、「その必要はなく、セッションに来てその場で思ったことを話せば良い」と言われた。しかしそうは言われても、日常生活で何か強く考えたことや感じたことがあると、このことは次のセッションで話すだろうな、そうしたらどんな風に返されるだろうか、などと考えてしまう。そして実際にセッションでその通り話してしまうこともあれば、全く忘れて別の話をすることもある。いずれにせよ、どれほど嫌なことがあったとしても、次のセッションで話せばいいと思えるのは、心のセーフティネットのような安全装置として機能している。まさに嫌なイメージに没入している瞬間は苦しいが、そのことをセッションで分析家に話している自分をまるで第三者かのように想像しはじめると、そのイメージの攻撃力や刺々しさはいくらか和らぐ。マインドフルネスの考え方に通ずるところのある、不快なイメージとの距離の取り方をはからずしも行っているのだと思うが、精神分析を受け続けることによるこういった効果に言及している書籍や論文には今のところ出会っていない。そもそも精神分析の理論的仕組みや精神分析家側の情緒に触れた書籍は多いが、精神分析を受ける側の生活や情緒の変遷を生々しく書いたものがない(あったら知りたい)。

コメント