嫉妬②

精神医学

前回の記事に引き続き、嫉妬に関して考察したい。

嫉妬に対して二つの方針を前回打ち出したが、さらに有効な手段として、一つの仮説を記したい。

未来のことでも、今現在のことでも、過去のことでも、他人に嫉妬している時の不快さは極まりないものである。

胸が苦しくて、お腹も痛くて、吐き気もして、しかし大抵その状況は簡単に好転させることができない。

特に、過去のことであればなおさら修正不可能である。

しかし改めてその嫉妬という感情を見つめてみると、それは自分の欲求の表れであることに気づく。

嫉妬は、嫉妬する相手がいて初めて成り立つが、その相手になりたいわけではなく、その相手が手にしているものを自分も手にしたいというのが実際のところである。AさんがBさんに嫉妬しているとして、その時Aさんの頭の中がBさんでいっぱいになってしまうことで苦しみが生じるが、実はAさんは、Bさんに憧れているわけではなく、あくまでもBさんが手にしているCというモノ(地位、金、名誉、資産、友達、恋人、etc.)に憧れているのである。

AさんはBさんのことをついつい考えてしまい苦しむが、それはBさんのことを考えたいからではなく、Cへの欲望が常にあるからだ。

そもそもBさんがいなければCというモノへの憧れを抱くことすらなかった可能性は大いにあるが、AさんのBさんに対する嫉妬は、Bさんによって惹起されたCへの欲望の抑圧と言い換えることができる。

私の仮説は、Bさんに嫉妬して苦しいとAさんが語るのであれば、Bさんとどのように向き合っていくかではなく、あくまでもCに対する欲望とどう向き合っていくかが重要であると気づくだけで、Aさんの嫉妬は幾分にも楽になるのではないだろうかというものだ。

AさんはCを手に入れたくて、でもそれが叶わなくて苦しい。その時、あくまでもBさんはその欲望の引き立て役でしかなく、苦しむべき対象ではないと気づくと、心が整理されてスッキリしないだろうか。

もちろんCを手に入れられなくて苦しいことには変わりないが、それでもBさんは他者でありコントロールできないが、Cへの欲望はあくまでも自分の中にあるものなので、Bさんに比べればコントロール出来るかもしれないと思わせてくれる。そのコントロールの可能性への希望が、嫉妬という苦しい感情の癒しとなるのではないだろうか。

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