外科と精神科では、治療方法・患者の性質・忙しさなど、誰でも想像がつく相違点がたくさんあるが、実際に働き始めて驚いたのは、看護師やソーシャルワーカーの治療に関する裁量の大きさに関する違いだ。
精神科外来においては、来院してから帰るまで、そのほとんどの時間を医師と話して過ごす。患者との対話をもとに薬物調整を行い、また会話の中で精神療法も行い、次の予約を決め、家に帰ってゆく。
しかし、入院患者においては全く話が違う。
精神疾患の入院治療は、その多くが「規則正しく健康で、かつ友好な人間関係に囲まれた生活」自体に治療効果がある。そして、この友好な人間関係の大部分を占めるのが、看護師やソーシャルワーカーと過ごす時間だ。
「おはよう」の挨拶、お風呂の予約、食事の配膳、配薬、院内散歩など、生活において医師以外のスタッフと話すことがたくさんある。これはどの臨床科でも当てはまることだが、それらの会話に精神療法の意を込めれば、医師よりもはるかに多く精神療法を提供することができる。
精神科のスタッフは、精神科をわざわざ選んで就職している人が多いため、そのあたりの覚悟がしっかりあるように見える。生活のサポートの中に、この人を治してやろうという優しく強い意気込みを感じる。
投薬の選択は医師にしかできないが、精神科の投薬はしっかりとした信頼関係の上にしか成り立たないと良く言われおり、そういう意味では医師としての自分の患者への貢献は、多くても3分の1くらいかなと感じる。
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