リストカットの効用

精神医学

頻繁にリストカットを行う20代の患者さんに、リストカットにはどんな効果があるのかを聞いてみたことがある。

その患者さんはとても知的で、普段から文章を書く人であったため、どんな表現をするか楽しみであったし、教科書の一文よりも得るものが大きいだろうと思っていた。

その患者さん曰く、リストカットとは、「心の痛みを身体の痛みに置き換えて、一時的に心の痛みに蓋をする行為」とのことだ。

驚くのは、あの痛ましい手首の傷の、まさに切っている時の痛みは凄まじいと思われるが、それでも心の痛みよりはマシだという点だ。切る方が痛ければ、彼ら彼女らはリストカットをしない。あくまでも心の痛みの方が痛いから切るのである。それほどまでに心が痛くなるのは一般には想像し難いけれど、本当に手首を切るより痛いのであれば、切ってしまう行動原理は理解できる。

リストカットという手段を無闇に奪ってしまうと、彼ら彼女らはより強い痛みに耐えなければならず、それは避けなければいけない。

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