最近、精神科への転科に関して個人的な相談を何件かいただき、改めて転科の難しさや、最初に何をすべきなのかを考えてみました。
まず、転科の難しさについて。
・情報不足
転科経験者が周りにいることは稀で、さらに今の新専門医制度のもとで科を変えた人は僅かです。経験者がそばにいたとしても、転科はデリケートな問題で、自分が転科を検討していることを公言するわけにもいかず、相談しづらいです。いつも仕事の相談をしている上司も、転科についてはほとんど何も知らないと思います。結果的に、Googleでひたすら調べ自分で動くしか方法はありません。
・新専門医制度の融通の効かなさ
ある程度調べれば分かることですが、新専門医制度は非常に転科しづらい仕組みを採用しています。プログラムの開始は一律に4月からと決められており、年次途中の転科はできません。また、プログラムの応募は前年の11月からであり、実際には8月ごろから動く必要があります。病院側が内内定を出しても、最終的なシーリングの発表は年末であり、そこで前年度より枠が減れば、内内定を出した人を落とす必要があります。病院側の裁量で人を採用できないというのは転科を検討している医師にとってやりづらいところです。
・精神科の募集枠の少なさ
特に都内で、精神科の人気は高まっています。一方都内の精神科医は余っているので、年々枠は減っています。2022年度は100人弱の採用だったはずです。
次に、転科の検討にあたってすべきことについて。
・情報収集
これにつきると思います。私は転科について相談できる人がいなかったので、ひたすらGoogleでリサーチしました。専攻医・転科・退局・新専門医制度などと検索し、転科経験者のブログや新専門医制度のホームページなどを漁っていました。医師用の転職サイトにも登録し、エージェントに相談したりもしました。実際に病院見学にいき、採用担当者と話をすることでしか得られない情報もありました(公には言えなくとも口頭では言えることはあるようです)。
・専門医を目指すのか、指定医だけ目指すのか
これは精神科特有の話ですが、精神科において何より大事な資格は専門医ではなく指定医です。指定医を持っていないと医療保護入院や隔離拘束ができないため、必須の資格です。ただ、この資格は専門医制度とは何も関係のない資格で、これだけを目指すのであれば専門医プログラムに申し込む必要はありません。指定医のみを目指すのであれば、非常にたくさんの病院が就職候補になりますし、転科の時期も自由です。私自身は、専門医をとれないとしても精神科に転科したかったので、できれば専門医も、無理なら指定医だけ、を目標に転科活動をしました。専門医プログラムを有する病院でも、まずは専門医プログラム外で採用し、1年後に専門医プログラムに登録させる、といった採用の仕方をしているところがあり、病院と要相談です。
・本当に転科したいのか
最後の最後までこれは考え続けるべきです。どの科でも嫌なことは必ずあります。転科をして満足できるのか、ありとあらゆる角度から検討すべきです。
・リスクを背負ってまで転科したいのか
新専門医制度のもとで転科をするのであれば、前年の11月には専門医プログラムに正式に応募する必要があり、そのタイミングですでに現在のプログラムの責任者にその旨を伝える必要があります。つまり、次の4月からのプログラムが決まっていない段階で、今のプログラムを中断する決定をしなければならないのです。精神科のシーリングは厳しいため、希望の病院に一つも受からなければ、次の4月から無職となります。たしかに医師は生活をしていくだけならバイトで十分ですが、それでも精神的なプレッシャーは相当なものと思います。多くの病院が内内定を出してくれますが、シーリング枠の発表は年末なので、採用の保証はしてくれません。無職となるリスクについては、十分に吟味する必要があります。
転科はとても大変ですが、私は何を仕事にするかは人生において何よりも重要なことの一つと考えてますので、リスクを背負って当然だと思います。実際は、都内を諦めることや、専門医を諦めて指定医のみ目指すことなど、妥協案がありますし、とりあえずバイトで生活はできると思えば、リスクを小さくすることは可能だと思います。
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