私にとって今回の転科は、ただ臨床科が変わった以上に大きな意味をもつイベントであった。
現役で医学部に入学し、医者としては王道の外科へ入局した自分にとって、転科とはある意味挫折であり、決心がついて行動するまでに物凄い大きな心理的な抵抗があった。
他人に言うには恥ずかしい妄想だが、「真っ当な道から外れて本当に良いのだろうか」という不安が強かった。
しかし結論から言うと、実際に行動してしまえば、そんな妄想は、本当に妄想でしかなったと気づいた。
勉強したいこと、体力的なことなど、様々な要素が自分にフィットしている仕事生活は本当に充実している。
医者に多いと思うのだが、社会的な要請を、それがまるで自分が心の底から願っていることかのようにすり替えて、自分の本当の心の声を聞かずに、エリート街道を進んでいくタイプの人がいる。その生き方で最後まで通せる人は良いが、おそらくそれは少数で、多くの人がどこかで社会的要請と心の声が衝突して、挫折を経験するのだと思う。「受験勉強なんてしたくない」という心の声を聞いた人は浪人し、「医学部は暗記ばかりでつまらない」という心の声を聞いた人は留年し、「自分の健康を犠牲にしてまで他人を救うことなんて出来ない」という心の声を聞いた人は外科を辞める。自分の人生のどのタイミングで社会・先生・親・プライドの期待に背いて心のままに行動するかは人それぞれだと思うけど、自分の場合は転科というイベントがそれであったように思う。
また、ネットの情報を当てにしすぎてはいけない、というのも今回の学びだ。
「何事も10年はやってみないと仕事の面白さなんて分からない」とか、
「3年は同じところで働かないと、中途半端な奴と見なされ誰も雇ってくれない」などと、
ネット上には自分の転科を妨げる情報がたくさん存在した。
しかし、自分は入局してからそれほど経たずに転科したが、中途半端と見なされることはなかったし、転科した直後から仕事は楽しいと思えたし、自分の心の声を信じてよかったと思った。
もしあなたが転科を迷っていて、心は転科したいと叫んでいるのに、
社会・親・先輩・恋人・自尊心がそれを邪魔しているのだとしたら、
今後の人生で、自分の心の声とそれ以外、どちらを優先させて生きていきたいのか、
繰り返し自問自答することをお勧めしたい。
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